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ミステリーや映画、パソコンなど趣味の話題を書きつらねています。最近はもっぱら映画の感想、そしてデジカメやパソコンなどデジタル機器に集中しがち。アジア関連の話題は別ブログ「萌えるアジア」に書いています。
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鮎川哲也「人それを情死と呼ぶ」
鮎川哲也が、「黒の白鳥」「憎悪の化石」の翌々年(1961年)に発表した「人それを情死と呼ぶ」。この作品も「黒の白鳥」に負けず劣らずの名作だった。

富士の樹海で発見された男女の白骨死体。浮気の末の心中かと思われたが、死んだ男の妻と妹は、この心中が偽装ではないかと疑いをもつ……。

偽装心中というと、真っ先に思い浮かぶのが、松本清張の「点と線」。
松本清張と鮎川哲也は因縁浅からぬものがあり、同じ雑誌に同時期に連載していた「黒の白鳥」と「零の焦点」で、犯行動機がカブってしまうなどの出来事もあった。これは偶然の一致だが、「人それを情死と呼ぶ」で心中、それも汚職問題による心中を扱っているのは、「点と線」を意識したものと考えられる。
というより、本人があとがきで「おなじ汚職という問題をとり上げた場合、本格作家はそれをどう料理するか」と述べているのだから間違いない。

「点と線」の有名な「4分間の空白」、鉄道マニア的な視点ではとても興味深いが、別段これをプロットに組み入れなくても成立する。というか、この4分間にどうやって向こう側のホームにいる人間を目撃させたのかと考えると実現不可能ともいえる。
メインのアリバイトリックも、今となっては弱い。

その点、この「人それを情死と呼ぶ」、心中と思われたものが偽装ではないかと疑うきっかけもスムーズ、男の妹と妻が素人ながら捜査に乗り出す描写も不自然でなく、途中までフーダニットでひっぱった上、偽装心中と思われた事件の意外な犯人と犯行動機が浮かび上がり、その犯人が犯した殺人事件のアリバイトリックも小粒ながらユニーク。そして結末はセンチメンタルな余韻を残す。
と、ミステリーとしても人間ドラマとしてもバランスがとれ、「憎悪の化石」のような欠点もない佳作。
一般的な知名度では「点と線」に劣るが、本格ミステリーとして見た場合、明らかにこの「人それを情死と呼ぶ」のほうに軍配があがる。

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